【禁煙について】メリット・効果的な禁煙方法

禁煙の効果やメリット、具体的、かつ効果的な禁煙方法についてご紹介します。禁煙に関する知識を深め、職場における受動喫煙防止や禁煙施策にお役立てください。

女性が禁煙マークと喫煙マークを手に持っている姿
目次

禁煙のメリットと方法

禁煙すると、さまざまな病気のリスクを下げることができます。禁煙はいつ始めても遅くはありませんので、できるだけ早いタイミングで取り組むことを検討しましょう。

これまでの平均喫煙本数や吸い始めた年齢、ニコチン・タール・その他の有害物質の含有量などによって、先々の健康をどの程度害することになるのかが変わってきます。体質や持病の有無によっても、たばこの害を受ける度合いは異なります。いずれにしても、喫煙が将来の健康に大きな影響を与えることに違いはありません。

たばこの種類(ニコチン・タールの少ないものにする、加熱式たばこにする)を代えたことによる安心感から禁煙が遠ざかる方も少なくありませんが、仮に軽いたばこに変えても、「根本まで吸う」「深く吸い込む」「本数が増える」と、たばこによる害を減らすことはできません。

一定の基準を満たした場合、屋内に喫煙所を設置できます。設置場所によっては、出入りの際にたばこの煙が喫煙所外にもれるなどの課題を抱えている企業もあります。喫煙所を設けず、全館禁煙にしている企業も増えてきていますが、新たな対策をする場合は、喫煙者にも理解を得る必要があります。

以下にさまざまな取り組みを行っている成功事例が紹介されていますので参考にして下さい。

厚生労働省:受動喫煙対策事例
https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/example/

禁煙のメリット

禁煙することにより、さまざまな疾病のリスクが低下します。また、喫煙による経済的な負担が減り、美容上の効果も期待できます。

(1)肺がんをはじめとする他の臓器のがんにかかるリスクが下がります。

禁煙10年後には、肺がんのリスクが半分程度になり、喉頭がん、口腔がん、膀胱がん、膵臓がんなどのリスクも低下することが知られています。

(2)たばこ病と言われる慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクが下がります。

COPDとは、主に喫煙が原因で起こる肺の病気です。肺の働きが低下し気管支が炎症を起こすことで、息切れ・痰・咳・呼吸が苦しくなるなどの症状が出て、徐々に進行します。 COPDに罹る人の約5%は、喫煙習慣がないことが明らかになっており、受動喫煙などによって罹患していると考えられます。

(3)高血圧の予防や改善効果があります。

(4)動脈硬化の進行がゆるやかになり、狭心症・心筋梗塞などの動脈硬化を基盤とする心臓病のリスクが大きく下がります。

(5)脳梗塞などの脳血管疾患のリスクが下がります。

(6)認知症のリスクが下がります。

(7)痰や咳、息切れなどの症状が改善します。運動したときの呼吸がしやすくなり、気持ちよく運動することができます。

(8)肌荒れやしわが改善し、皮膚の老化も遅くなり、美容上の効果が期待できます。

(9)たばこ代と時間の節約になります。

(10)舌にある味蕾(味を感じるセンサー)の状態が改善するため、食事が美味しく感じられるようになります。

禁煙することで太る、というイメージがありますが、ずっと太り続けるわけではありません。平均すると数か月で1~2kgほど増加する人が多いですが、その後落ち着き、食欲をコントロールしやすくなります。数キロ太ることと喫煙を続けることを天秤にかけると、禁煙によるメリットの方がはるかに大きいです。

(11)第三者や大切な家族に有害物質を吸い込ませない。

ある調査によると、屋外の喫煙は、7割以上の人が不快に思っているという結果があります。

(12)たばこのニオイや歯のヤニからも解放されます。

たばこを吸わない人と比べると喫煙者は寿命が10年短くなる報告もあるため、健康上の大きな損失となります。禁煙はいつからでも大きなメリットがありますが、一日でも早く禁煙することが大切です。若ければ若いほど、禁煙のメリットが大きくなります。

たばこによる将来的な病気のリスクを知る方法は?

喫煙指数(ブリンクマン指数)というものがあり、一日平均喫煙本数と喫煙年数から計算します。

この値が700以上になると慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクが上がると言われています。400以上では肺がんのリスクが上がります。女性は、少ない数値であっても、リスクが上がりはじめる傾向があります。

喫煙指数(ブリンクマン指数)= 1日あたりの平均喫煙本数×喫煙した年数

これまでの平均喫煙本数が1日20本、30年間吸っていた人
例: 20本×30年間=600

700以上ではCOPDのリスクが上がり、さらに喉頭がんや肺がんのリスクは顕著に高まります。

禁煙方法について

個人差や考え方によりますが、ニコチン依存の度合いによっては、禁断症状が強く現れる人もいます。

一般的に禁断症状が現れる期間は10日間ですが、数日をピークに和らいできます。気持ちにゆとりがないと、再喫煙のリスクになります。

禁煙スタート日を検討し、計画を立てて実行にうつしましょう。ストレスの少ない時期や誕生日、記念日、新年など気持ちを切り替えられる時期などがお勧めです。

禁煙成功者は3~4回禁煙に挑戦しています。数日しかもたなかったと言う方も少なくありませんが、失敗しても諦めず、粘り強く、繰り返し挑戦することをお勧めいたします。

【方法1】自力で乗り切る

もともとの喫煙本数が多い人やニコチン依存性が高い人は、止めにくいので、専門家のサポートおよび薬の使用をお勧めします。ご自身でニコチン依存チェックを行う方法をご紹介します。

【TDSニコチン依存度テスト】

禁煙治療の保険診療で用いられる、ニコチン依存度テストです。ニコチン依存症管理料を算定するためには5点以上取る必要があります。5点以上で「ニコチン依存症」と診断されます。

はい : 1点 いいえ : 0点

問1. 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くたばこを吸ってしまうことがありましたか?

問2. 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか?

問3. 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、たばこがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか?

問4. 禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか?
(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)

問5. 問4でうかがった症状を消すために、またたばこを吸い始めることがありましたか?

問6. 重い病気にかかったときに、たばこはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか?

問7. たばこのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?

問8. たばこのために自分に精神的問題(※)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?

問9. 自分はたばこに依存していると感じることがありましたか?

問10. たばこが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか?

(※注)禁煙や本数を減らした時に出現する離脱症状(いわゆる禁断症状)ではなく、喫煙することによって神経質になったり、不安や抑うつなどの症状が出現している状態。

*厚生労働省e-ヘルスネット参照

合計何点だったでしょうか?点数が5点未満であれば、ニコチン依存性が低く、自力で止めやすいと判断できます。

【方法2】禁煙アプリを活用する。

無料で利用できるものもありますが、有料で専門家のサポートを受けられるタイプもあります。

【方法3】禁煙外来を利用する。

禁煙率が一番高い方法です。条件を満たせば、保険診療が受けられます。また、加入の健康保険組合や企業へ補助金を申請できる場合もあります。禁煙治療を行っている医療機関を受診の際には、あらかじめ薬剤の在庫があるか確認の上、受診しましょう。一般的に禁煙外来のサポートは、約3ヶ月です。

【方法4】薬局でニコチンパッチやニコチンガムを購入する。

薬局の薬剤師に相談してみましょう。

企業における禁煙対策について

医者が禁煙マークを差し出しているイメージ

企業における禁煙対策は、従業員の健康促進や福利厚生の一環として重要な施策のひとつです。禁煙対策の具体的な取り組みをいくつか紹介します。企業における禁煙対策には、禁煙ルールの策定や禁煙支援プログラムの提供、禁煙啓発キャンペーンの実施などがあります。

1.禁煙ルールの策定と徹底

企業は、禁煙ルールを策定し、従業員に周知することが大切です。具体的には、喫煙場所の設定や禁煙区域の明示、禁煙ルールに違反した場合の罰則などがあげられます。

2.禁煙支援プログラムの提供

企業は、従業員の禁煙を支援するプログラムを提供することができます。具体的には、禁煙相談や禁煙補助薬の提供、禁煙セミナーの開催などがあります。

3.禁煙キャンペーンの実施

禁煙キャンペーンを実施し、禁煙についての啓発を行います。具体的には、ポスター、禁煙に関する記事の掲載、期間限定の禁煙イベントの開催などです。

従業員の健康促進や福利厚生の向上につながるため、積極的な取り組みが推奨されます。

喫煙率の変化

厚生労働省国民健康・栄養調査(令和2~3年は新型コロナウイルス感染症の影響により調査中止)によると、令和元年の20歳以上の喫煙率(習慣的に喫煙している者)は、平均16.7%で年々減少です。

【男女別 喫煙率】
男性: 27.1%
女性: 7.6%

男性は年々順調に減少、女性はわずかながら減少してきています。しかし、ともに下げ止まり状況です。

喫煙者の年齢は、働き盛りの30歳から60歳の男性に多い傾向がみられ、多い順に40歳代(36.5%)、30歳代(33.2%)、50歳代(31.8%)、60歳代(31.1%)、ついで20歳代(25.5%)、70歳代(15.1%)となっています。

女性の喫煙者の年齢は、多い順に50歳代(12.9%)、40歳代(10.3%)、60歳代(8.6%)、ついで20歳代(7.6%)、30歳代(7.4%)、70歳以上(3.0%)となっています。

働き盛りの30歳から60歳に禁煙を促す活動をすることにより、従業員の健康を守ることと同時に、残留受動喫煙・三次喫煙(サードハンドスモーク)への注意や配慮も必要です。

また、喫煙開始年齢が低いほど、喫煙による悪影響が現れやすいことから、入社時からの早期の対応が有効かもしれません。

喫煙所が設けられていても、喫煙直後には、喫煙者の服や髪の毛にたばこのニオイがついていることがあります。これらには有害成分が含まれており、周囲の人はたばこによる害を受けていることになります。これをサードハンドスモークと言います。

加熱式たばこは、煙が見えにくく、ニオイが少ないですが、喫煙者は有害物質を吸い込んでいることには変わりありません。加熱式たばこであっても、周りの人に受動喫煙の影響があることを喫煙者は理解し、十分な配慮をすることが必要です。

加熱式たばこも、紙巻きたばこ同様にCOPDのリスクを高めます。また、同じく受動喫煙による健康被害の可能性も懸念されています。したがって、喫煙場所以外の公共の場での喫煙は認められていません。

喫煙時間は労働時間に含まれる?

議論が分かれるところですが、トイレの回数やお茶を入れに行く時間や頻度を考えると、喫煙時間だけを区別することはできないのが現状です。とはいえ、1日に何回も長い時間、喫煙所に居るとなると、業務に支障をきたし、不平等という声が上がる可能性があります。

規制することは難しいですが、喫煙者は、非喫煙者への配慮が必須です。どのような事に配慮したらよいのか、会社としても対策を練っておきましょう。

ニオイへのエチケットも必要です。たばこを吸った後にすぐに戻ると、服や呼気の中にも有害物質が含まれている、ニオイが残っているなど、他の方へ不快な思いをさせることにつながります。消臭スプレーを設置する工夫も必要でしょう。

喫煙の回数が多い、長いなど、業務上支障がある場合には、指導対象となる可能性が出てきます。このようなケースは、ニコチン依存度が高い可能性があるため、無意識のうちに吸いに行っていることも考えられます。

このようなケースの場合、医療へつなげることが必要となります。産業保健スタッフや産業医のサポートが重要で、本人の意志や状況を十分考慮して支援することが大切です。

禁煙を続けるために

  1. 禁煙を続けていく強い意志を持ち、それを貫くことが大切です。
  2. 禁煙の理由を明確にしておきます。例えば、健康上の理由、家族のため、時間とお金の節約ためなど
  3. 家族や友人、または禁煙支援のアプリや専門家、自助グループなどのサポートを受けると、モチベーションが維持しやすくなります。
  4. 禁煙によるストレスを管理するために、ジムに通う、ヨガやウォーキングなど身体を動かす、外気で深呼吸をするなどのリラックス方法を身につけるようにします。
  5. 吸いたくなったときの代替手段を考えておきます。例えば、ノンシュガーガムや飴を舐める、冷たい水を飲むなど、口腔刺激を得られるものを用意しておきます。
  6. 禁煙したことを賞賛することが大切です。自分自身に対して肯定的な言葉をかけることが、継続するためのエネルギー源になります。禁煙を続けることは健康や生活の質を改善し、長期的には健康寿命を延ばすことにつながります。適切な栄養をとり、適度な運動をし、十分な睡眠をとるなど健康的なライフスタイルを身につけることで禁煙の成功率を高めることができます。

この記事を書いた人

小田部 淳子

看護師として外科病棟勤務。その後保健師として銀行の健康管理センターにて産業保健、健康管理センターにて人間ドックおよび健診後の保健指導、その後出版社にて健診後の文書指導、特定保健指導、糖尿病重症化事業、電話およびWeb健康相談、電話相談運営、社内研修企画運営、健康関連原稿の業務を歴任。現在、特定保健指導および原稿の業務に携わっている。

【保有資格および研修終了】

  •  看護師
  •  保健師
  •  養護教諭二種免許
  •  一種衛生管理者
  •  産業保健指導者、ヘルスケアトレーナー
  •  ピンクリボンアドバイザー初期認定
  •  東京糖尿病療養指導士
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