更年期の症状 ~男性編~

男性の更年期と言うと、聞き慣れない印象ですが、男性も年齢を重ねると更年期が訪れます。一般的にホルモンの低下の速度は女性に比べると緩やかで、個人差はあるものの40歳から60歳の間が該当します。

男性ホルモン(テストステロン)は、血液の循環をよくする役割や記憶を司る海馬の働きにも関与しているため、低下すると認知機能にも影響すると考えられています。また、太り気味の人や動脈硬化の進んでいる人は、とくに更年期の症状が起こりやすくなります。

更年期というと女性が抱えている不快な症状と捉えがちですが、男性もなんとなく気力がわかない、体がだるいなどの症状でお悩みの方は、対策をとり、快適な日常を送れるようにしたいものです。

目次

更年期障害にみられる症状は?

顔をしかめる男性の画像

身体面の症状

だるさ、疲れやすくなる、疲れがとれない、食欲がなくなる、めまい、冷え、耳鳴り、肩こり、体力や筋力の低下、頭痛、のぼせ・ほてり・発汗などのホットフラッシュなど。

精神面の症状

気持ちが不安定になりやすい、ちょっとしたことでイライラする、憂鬱な気分になる、やる気がおきない、不安感が強い、記憶力や集中力が低下したと感じる、眠れない、夜中に目が覚めるなど。

性機能障害

性機能の低下、性欲の減退など。
60歳代になると、性欲が減退した、勃起力が低下したと感じる方は珍しくありません。

症状には個人差があり、症状の起こり方や程度は異なります。男性は、女性よりもホルモンの低下がゆっくりなため、気になるような症状が起こりにくい傾向があります。

また、更年期の症状が他の健康問題に関連している可能性もあるため、気になる症状が続く場合は、自己判断は避けて速やかに医師に相談することが大切です。

更年期の症状をチェックしてみよう

LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)に対する問診票(AMSスコア)

【症状】

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q1. 総合的に調子が思わしくない
(健康状態、本人自身の感じ方)

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q2. 関節や筋肉の痛み
(腰痛、関節痛、手足の痛み、背中の痛み)

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q3. ひどい発汗
(思いがけず突然汗が出る。緊張や運動と関係なくほてる)

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q4. 睡眠の悩み
(寝つきが悪い、ぐっすり眠れない、寝起きが早く疲れがとれない、浅い睡眠、眠れない)

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q5. よく眠くなる、しばしば疲れを感じる

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q6. いらいらする
(当り散らす、些細なことにすぐ腹を立てる、不機嫌になる)

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q7. 神経質になった
(緊張しやすい、精神的に落ち着かない、じっとしていられない)

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q8. 不安感
(パニック状態になる)

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q9. からだの疲労や行動力の減退
(全般的な行動力の低下、活動の減少、余暇活動に興味がない、達成感がない、自分をせかさないと何もしない)

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q10. 筋力の低下

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q11. 憂うつな気分
(落ち込み、悲しみ、涙もろい、意欲がわかない、気分のむら、無用感)

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q12. ”絶頂期は過ぎた”と感じる

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q13. 力尽きた、どん底にいると感じる

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q14. ひげの伸びが遅くなった

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q15. 性的能力の衰え

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q16. 早期勃起(朝立ち)の回数の減少

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

Q17. 性欲の低下
(セックスが楽しくない、性交の欲求が起こらない)

  • なし   ···1点
  • 軽い   ···2点
  • 中等度  ···3点
  • 重い   ···4点
  • 非常に重い···5点

合計【症状スコア重症度】

  • 17~26点····なし
  • 27~36点····軽度
  • 37~49点···中等度
  • 50点以上···重度

*引用文献:加齢男性性腺機能低下症候群診療の手引き

中等度以上は受診の目安となりますが、生活への支障の度合いを含めて、個人の判断で検討しましょう。上記の点数は体調などによって変化する可能性があります。定期的にチェックする、身体の変化を感じたら確認してみるなど、健康管理に役立ててみましょう。

生活面の対策は?

つづいて、健康的な生活を送るためのセルフケアについて、ご紹介します。

(1) 栄養バランスのよい食事

毎食、ご飯やパンなどの主食、肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質、野菜・きのこ類・海藻などの副菜を添えるようにします。また、果物も適量取り入れ、油ものなど脂質は控えめにしましょう。

この他、精のつく食べ物として、ニンニク、生姜、玉ねぎやニラを使った料理、乳製品などのたんぱく質、良質な油のオリーブオイル、アーモンドなどがお勧めです。また、カフェインやアルコールは、控えめにしましょう。

(2) 適度に体を動かしましょう

自律神経を整えるために、体を動かし代謝を上げましょう。体を動かすことにより、血液やリンパの流れがよくなり体調が整いやすくなります。

過度なストレスは、更年期の症状を悪くすることがあります。体を動かすことにより睡眠の質がよくなり、ストレスのコントロールに役立ちます。

また、血圧・中性脂肪・コレステロール・血糖値を良好に保つことで、肥満・がん・認知症の予防に役立ち、筋力アップ、自律神経のバランスを整えることにつながります。

やや早めに歩くことは手軽で取り組みやすい運動です。目安は、週150分程度です。

この他、スクワットや腕立て伏せなどの筋力トレーニングも週2回以上取り入れるとよいでしょう。運動は、男性ホルモンの産生が促されると考えられています。長続きを目標に活動量アップに努めてください。

(3) 生活のリズムを乱さず、十分な睡眠を心がけましょう

男性ホルモン(テストステロン)の分泌は、寝ている間に増えると考えられています。睡眠不足にならないように、そして寝起きの時間をできるだけ一定にするように心がけましょう。

睡眠の質を上げるためにも、寝る前のパソコンやスマートフォンの使用は控え、快適に眠れるように寝室の環境を整えましょう。

(4) タバコを控える

タバコを吸う方はできるだけ控え、禁煙を検討しましょう。禁煙外来の利用は、禁煙への近道です。

(5) サプリメントの活用

サプリメントの活用も一つの方法です。亜鉛、マカ、アシュワガンダ、アルギニン、シトルリン、トリカットアリなどがあげられます。

サプリメントは、できるだけ国内で製造されたもので、原材料や添加物の安全性を確認して購入しましょう。また持病のある方は、飲み合わせに問題がないか、主治医または薬剤師への相談をお勧めいたします。

(6) カウンセリングなどのサポートを受ける

心理面の症状は、必要に応じて、カウンセリングや心療内科などでのサポートが役立つこともあります。

何科を受診すればよい?

白衣を着た笑顔の女性イメージ

男性更年期の相談は、泌尿器科、男性更年期外来が専門です。

医療機関では、ホルモンの数値の検査を行い、症状に合わせた治療が受けられます。不快な症状が軽くなるため、生活の質がよくなる方が多いです。

治療内容によっては、副作用や副反応が出ることもあります。そう言ったリスクや不安については、担当医とよく話をして、安心して治療をうけられるとよいでしょう。

更年期の治療は?

睡眠、食事や運動などのセルフケアで症状が改善されない場合は、専門の診療科を受診して、治療の可否を検討してもらいましょう。

(1) ホルモンバランスを整えるホルモン補充療法

症状および検査数値を元に、注射または塗り薬を使用します。一般的にホルモンの値が低く、症状が重度の場合が対象の治療法です。ホルモン補充療法のリスクや副作用についても医師と相談し、納得した上で治療を受けるようにしましょう。

また、前立腺がん・重症の前立腺肥大などを患っている方や睡眠時無呼吸症候群などの持病のある方は、治療の対象外となります。

(2) 漢方薬

一般的にホルモンの値があまり低くなく、症状が軽い場合が対象です。

男性ホルモン(テストステロン)の分泌を促す漢方として、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や、加味逍遙散(かみしょうようさん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などがあります。

(3) ED治療薬

性機能の低下、性欲の減退には、ED治療薬が処方されます。

(4) 向精神薬

気持ちが不安定になりやすい、ちょっとしたことでイライラする、憂鬱な気分になる、やる気がおきない、不安感が強い場合は、抗不安薬や抗うつ薬などが処方されることもあります。

年齢と共に、自然と男性ホルモンは低下していきます。体の不調が続き、なんとなくコンディションが優れないと感じ、そろそろ更年期かなと思われる方は、ぜひ一度専門の医療機関で相談されてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

小田部 淳子

看護師として外科病棟勤務。その後保健師として銀行の健康管理センターにて産業保健、健康管理センターにて人間ドックおよび健診後の保健指導、その後出版社にて健診後の文書指導、特定保健指導、糖尿病重症化事業、電話およびWeb健康相談、電話相談運営、社内研修企画運営、健康関連原稿の業務を歴任。現在、特定保健指導および原稿の業務に携わっている。

【保有資格および研修終了】

  •  看護師
  •  保健師
  •  養護教諭二種免許
  •  一種衛生管理者
  •  産業保健指導者、ヘルスケアトレーナー
  •  ピンクリボンアドバイザー初期認定
  •  東京糖尿病療養指導士
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