【日本人の3人に1人が発症】帯状疱疹の予防のために

女性の看護師のイメージ

日本人の多くが罹患する可能性のある「帯状疱疹」。プレゼンティーズムに影響を与える可能性のある帯状疱疹について、職場での対策をOHサポート株式会社 代表 産業医の今井 鉄平先生にご寄稿いただきました。

目次

はじめに

日本人成人の90%以上は帯状疱疹の原因となるウイルスが体に潜んでいて、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になると言われています。発症すると神経性の痛みが後遺症として残ることもあり、何年も後遺症に苦しめられることもあります。中には睡眠障害につながったり、就労への大きな影響が出たり(プレゼンティーズム)というケースもあります。『症状が出た時の早期治療』、『ワクチンによる予防』が重症化や後遺症の予防にとって極めて重要で、帯状疱疹に関する情報を従業員に周知しておくことをお勧めします。

そもそも「帯状疱疹」とは?

帯状疱疹はウイルスで起こる皮膚の病気で、痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれが、上半身や顔などに多数集まって帯状に生じます。皮膚症状に先行して痛みが生じ、その後、皮膚症状が現れると、ピリピリと刺すような痛みとなり、夜も眠れないほど激しい痛みを感じる場合があります。痛みが起こる原因は、神経の中で炎症を起こしているからですが、これによる神経の損傷がひどいと、皮膚の症状が治った後も、痛みが長期間続くことがあります(帯状疱疹後神経痛:PHN)

水ぼうそうとの関係は?

女の子が肘の周辺を掻いている姿

帯状疱疹は、多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こります。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内(神経節)に潜伏していて、過労やストレス等で免疫力が低下すると、ウイルスが再び活性化して、帯状疱疹を発症します

新型コロナウイルスとの関係は?

新型コロナウイルスとの関連について気になる方もいらっしゃることかと思います。50歳以上で新型コロナウイルス感染症と診断された人は、診断されなかった人と比較して、帯状疱疹の発症リスクが高い可能性があることが示唆された米国の研究報告もあります。ただ、新型コロナウイルスに限らず、体調が悪い時に発症する可能性がありますので、体調管理には日ごろから気をつけましょう。

帯状疱疹になってしまったら

早期治療が大事

帯状疱疹の治療は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬と、痛みに対する痛み止めが中心となります。発疹が出てから2~3日以内に抗ウイルス薬を開始することが、重症化や後遺症を防止するためにも大事です。ふだんは感じたことのない痛みや違和感が、体の左右どちらかに、あるいは一部の範囲に出てきたら、要注意のサインです。痛みのある箇所に細かい赤い斑点や水ぶくれなどの皮膚症状が出てきたら、早めに皮膚科を受診するようにしましょう。

帯状疱疹ワクチンについて

50歳以上の人は、ワクチンを接種することによって帯状疱疹を予防することができます。日本人成人の90%以上は、子供の時に水ぼうそうに感染するなどして、帯状疱疹のウイルスに対する「抗体」を有しています(下図)。しかしながら、獲得した免疫は年齢とともに弱まり、50歳以上で帯状疱疹を発症してしまうリスクが高まる傾向があります。そのため、ワクチンを接種して免疫の強化を図ろうというのが帯状疱疹の予防接種の目的です。

図)年齢/年齢群別の水痘抗体保有状況の年度比較

図)年齢/年齢群別の水痘抗体保有状況の年度比較

国立感染症研究所: 病原微生物検出情報(IASR).「年齢/年齢群別の水痘抗体保有状況、2019年」より

ワクチンの種類について

ワクチンには、生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があります。生ワクチンは1回の接種で、予防効果は50%くらい、5年で効果が落ち、費用は8,000円程度になります。不活化ワクチンは2回の接種が必要で、予防効果は90%以上と高く、9年以上の効果持続が確認されていますが、費用は2回で4万円くらいと高めです。接種に注意が必要な方もおりますので、接種希望の方はまずは医師とご相談ください。

  • 生ワクチン   … 1回接種 予防効果50% 5年程度持続 8,000円程度
  • 不活化ワクチン … 2回接種 予防効果90% 9年程度持続 40,000円程度(2回接種で)

いずれも任意接種ですので自己負担となりますが、自治体(市区町村)で独自に費用補助を行っているところも増えてきております。接種に際しては、ぜひお住まいの自治体のホームページなどを確認することをお勧めます。

参考文献: グラクソ・スミソクライン株式会社. 帯状疱疹予防.jp
https://taijouhoushin-yobou.jp/

この記事を書いた人

今井 鉄平 氏
OHサポート株式会社 代表 産業医

2022年、日本産業衛生学会奨励賞受賞
【資格】

  • 産業医
  • 日本産業衛生学会専門医・指導医
  • 医学博士
  • 労働衛生コンサルタント
  • 社会医学系指導医
  • Master of Public Health (MPH)
  • 経営管理修士(MBA)


【所属学会】

  • 日本産業衛生学会(前産業衛生学雑誌編集委員)
  • 日本疫学会
  • International Commission on Occupational Health
  • 日本内科学会
  • 日本プライマリ・ケア連合学会 他
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