慢性肝臓病を予防しよう

慢性肝臓病ということばをご存じですか?
場合によっては肝硬変や肝臓がんの原因となることもある病態で、悪化させないためには、
できるだけ早く適切な定期検査や治療を受けることが重要です。

慢性肝臓病とは

慢性肝臓病とは、肝炎ウイルスや脂肪肝、アルコール、免疫異常等の何らかを原因として肝臓が長期にわたり炎症とその修復機転で起こる線維化によって肝臓が持続的な障害を生じている(肝臓がくり返しダメージを受けている)状態で、進行すれば肝硬変といった肝臓の機能不全状態や肝がんの成因となり得ます(図1)。

図1)肝臓病の進行

出典:日本肝臓学会. 奈良宣言特設サイト-一般の方向け

最近、特に生活習慣病を基盤とするいわゆる脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎(NASH)やアルコール性肝疾患)などが進行して肝硬変や肝がんに至ることも増えており、注意が必要です。

しかしながら、肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、肝臓病は病状が進行して、肝硬変や肝臓がんに進行して、疲れやすい、顔色が悪い、お腹が張ったなどといった進行した症状で初めて肝臓病が見つかるひとも少なくありません。では、どのような場合に慢性肝臓病を疑い、検査を受けたらよいのでしょうか?

ALT値が30を超えたらかかりつけ医の受診を

日本肝臓学会では、定期健康診断等でALT(GPT)値が30を超えていた場合、まずかかりつけ医等を受診することを勧めています(奈良宣言2023)。

肝細胞が傷つくと細胞内のAST(GOT)、ALT(GPT)が漏れ出して,血管内に移行して数値が上昇します。ALTは肝臓以外の臓器にあまり含まれていないため,その血液中の高さは肝障害を反映するとされています。

かかりつけ医では、血液検査や腹部超音波検査などを受けられますが、それらによりウイルス性肝炎・肝線維化を伴う(進行した)脂肪肝・アルコール性肝障害・薬物性肝障害・自己免疫性肝疾患等の可能性がある程度判別できます。
その結果で必要と判断されれば、さらに消化器内科におけるより詳しい検査を受けることで、肝疾患の早期発見・早期治療に繋がることが期待されます(図2)。

図2)慢性肝臓病診療の流れ

出典:日本肝臓学会. 奈良宣言特設サイト-一般の方向け

慢性肝臓病の発見が遅れ、肝硬変にまで至ってしまうと、治療により改善させることが難しくなります。
早期に治療を開始することで、原因となる疾患の治癒(例:C型肝炎)や、治癒ができなくても肝硬変・肝がんに至ることを予防することが可能になります

自覚症状がないままに、いつのまにか進行してしまっている慢性肝臓病。
肝硬変や肝がんなどの怖い状態に至る前に、日ごろの定期健康診断の結果をきちんと活用し、慢性肝臓病の予防に努めましょう。

参考文献:日本肝臓学会. 奈良宣言特設サイト-一般の方向け

この記事を書いた人

今井 鉄平 氏
OHサポート株式会社 代表 産業医

2022年、日本産業衛生学会奨励賞受賞
【資格】

  • 産業医
  • 日本産業衛生学会専門医・指導医
  • 医学博士
  • 労働衛生コンサルタント
  • 社会医学系指導医
  • Master of Public Health (MPH)
  • 経営管理修士(MBA)


【所属学会】

  • 日本産業衛生学会(前産業衛生学雑誌編集委員)
  • 日本疫学会
  • International Commission on Occupational Health
  • 日本内科学会 他
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