50歳以上を中心に、転倒による骨折等の労働災害が増加し続けています(図1)。
職場で、転倒防止のための措置を検討しましょう。

図1)転倒災害の現状
出典:厚生労働省 労働者の転倒災害(業務中の転倒による重傷)を防止しましょう
https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/content/contents/002367968.pdf
転倒災害のパターン
転倒災害の典型的なパターンとして、つまずき・踏み外し・滑りの3つがあげられます。つまずきの原因としては、床の凹凸や段差、床に放置された荷物や商品などがあります。踏み外しの原因としては、通路の照度が不足していたり、大きな荷物を抱えるなど、足元が見えない状態での作業があります。滑りの原因としては、床が滑りやすい素材である、床に水や油が飛散している、ビニールや紙などの滑りやすい異物が床に落ちているなどがあります。いずれもちょっとした原因が大きな災害につながっています。
転倒災害増加の背景
加齢に伴い、脚筋力・敏捷性・バランス能力・柔軟性・視力・薄明順応(※)などに機能低下が生じるため(図2)、高齢者では転倒を起こしやすくなります。また、女性においては、加齢に伴い骨粗鬆症も生じてくるため、転倒による骨折など転倒災害が重症化しがちです。
<用語の説明(※)>
・脚筋力:歩行や立姿勢の維持
・敏捷性:とっさの動きの正確さと早さ
・バランス能力:平衡機能、姿勢のバランス保持
・薄明順応:明るい場所から薄暗い場所に移動した際に、目がその明るさに慣れて見えるようになる能力

図2)加齢に伴う機能低下
出典:中央労働災害防止協会.エイジアクション100https://www.jisha.or.jp/Portals/0/resources/research/pdf/202103_01.pdf
転倒災害防止のために(チェックリストの活用)
転倒災害防止のためには、つまずき・踏み外し・滑りの原因を作らないよう、予防対策を行っておくことが重要です。下記チェックリスト(図3)を活用して、職場の転倒防止に日頃から取り組みましょう。

図3)転倒防止のためのチェックリスト
出典:中央労働災害防止協会.エイジアクション100https://www.jisha.or.jp/Portals/0/resources/research/pdf/202103_01.pdf
この記事を書いた人

今井 鉄平 氏
OHサポート株式会社 代表 産業医
2022年、日本産業衛生学会奨励賞受賞
【資格】
- 産業医
- 日本産業衛生学会専門医・指導医
- 医学博士
- 労働衛生コンサルタント
- 社会医学系指導医
- Master of Public Health (MPH)
- 経営管理修士(MBA)
【所属学会】
- 日本産業衛生学会(前産業衛生学雑誌編集委員)
- 日本疫学会
- International Commission on Occupational Health
- 日本内科学会 他


