紙の健康診断結果のデータ化・一元管理するには?健診結果データ管理の疑問に答えます

紙がばらばらで頭を抱える女性のイメージ

近年、人的資本経営や健康経営など、従業員に焦点を当てた経営のあり方が広がってきました。従業員の健康な心身、快適な職場があってこそ、持続可能な企業活動を進めることができるといえます。 今回は従業員や職員の健康維持・増進のためのひとつの手として、健康診断結果にまつわる課題の整理、解決策、健診結果データの活用方法について、労働衛生・産業保健に長年携わってきた株式会社エヌ・エイ・シーが解説します。

目次

健康診断結果をめぐる課題

従業員の健診結果に関してさまざまな課題をお持ちの企業や団体もあるかと思います。株式会社エヌ・エイ・シーも健康管理システムのご提供を通して、各社様の健診結果に関する課題をうかがってきました。ここで代表的な課題をご紹介します。

紙で健康診断結果を管理している場合

課題1:紙の管理で煩雑になりがち

「DX化」などの言葉も流行していますが、多くの従業員を抱える企業でも、健診結果を紙で管理しているところはまだまだ多くあります。そのような場合、紙の管理に関する事務作業が多くなってしまい、本来やりたい産業保健業務に時間を割けない可能性もあります。また、在宅勤務も一般的になってきてはいますが、健診結果は「特定の機微な個人情報」とされ、社外への持ち出しができませんので、健診結果を取り扱う健康管理部門は原則出社対応にならざるを得ません。

課題2:保管方法について

あわせて保管場所の問題もあります。紙管理の場合は、物理的にもかなりの場所を要します。さらに、一部の健康情報(ストレスチェック結果など)をシステムで管理している場合、紙とデータとで保管方法も複数になり、健康管理業務も煩雑になりがちです。

課題3:労働基準監督署への報告

健診結果がデータ化されていない場合、労働基準監督署への定期健康診断報告書の作成も、ひとつひとつの検査項目の有所見者数を目視でカウントする必要がありますので、多くの時間が掛かります。

課題4:要管理者のスクリーニング

紙の健診結果からデータを読み取り、要管理者をスクリーニングする作業は、手間もかかる上、見落としや抜け漏れが発生することが多くあります。またある条件で抽出するというようなことも困難です。

データで健康診断結果を管理している場合

課題5:単位やフォーマットがバラバラ

健康診断を実施するにあたり、複数の医療機関・健診機関と提携している場合、検査結果の数値の単位やフォーマットがバラバラに届くこともあります。たとえば白血球数について、同じ検査結果だとしても、各機関によって「白血球数:6300」「WBC:6.3」「白血球数(WBC):0.63」といったバラバラの表記・単位で表現される場合があります。これらのデータをExcelにまとめて健診結果を管理する場合、この表記・単位を統一するだけで大変な時間、手間が掛かります。健診結果についての統一的な表記方法が無いため、このような課題が表出します。

課題6:バラバラなので分析がしづらい

上記のようにバラバラなデータで健診結果を管理している場合は、組織の健康状況の把握・分析が大変難しくなります。たとえば白血球数の数値をもとに並べ替えをしたくても、単位が異なっている場合は正しい順序での並べ替えができません。
さらに、ストレスチェックなどその他の健康情報や残業時間等の人事情報がバラバラに管理されている場合、複合的な分析はかなり難しいでしょう。
従業員や企業の健康傾向を調べるためにも、まずは健康にまつわる各種情報を統一データ化して、一元的に管理することが、分析の第一歩となります。

健康診断結果をめぐる課題

  1. 紙管理であり、データ化されていない
  2. データ化していても統一フォーマットで管理されていない
紙の管理で事務作業に時間が掛かる保管に場所を取る
有所見者数を目視でカウントしなければいけない要管理者が抜け落ちてしまう可能性がある
単位やフォーマットを整えるのに時間が掛かる単位が異なるので分析ができない

紙の健康診断結果のデータ化の方法

パソコンと紙媒体のイメージ

前述の通り、健康診断結果をめぐる課題は大きく分けて、紙管理であることと、たとえデータ化していてもフォーマットが統一されていないこと、の2つがあります。続いて、これらの解決方法をご紹介いたします。まずは、紙のデータ化について解説します。解決方法としては主に4つありますので、各社の状況次第でデータ化の方法を検討してみましょう。

健診実施機関にデータ提供できるかの確認

まず最初に必ず確認して欲しいことがあります。それは、健診実施機関に健診結果をデータで提供してもらえるかの確認です。
健診実施機関はもともと健診結果をデータで保管しているので、健診実施機関によっては健診結果をデータで提供してくれる場合があります。データ提供ができる場合は、紙管理の問題が解決できる可能性もありますので、必ず交渉をしてみましょう。

パンチ入力代行

パンチ入力とは、手書きや紙面などのアナログなデータを、人の手でパソコンなどを使い、データ化することをいいます。たとえば、紙の健診結果の数値をExcel等に入力していくこと、などがパンチ入力(俗称)です。一般的に、ベンダーに紙の健診結果を送付すると、ベンダーの担当者が入力し、データ化される、という流れです。
面倒な事務作業を外注することができますが、費用が比較的高価なことが多いです。ここで重要なのは、「パンチ入力の精度」と「所要時間」です。健康診断結果という重要な個人情報が誤って入力された場合、従業員への就業判定など対応が大きく異なる場合があります。また、せっかく依頼をしているにもかかわらず、数値反映までの時間が何週間・何か月と掛かってしまっては意味がありません。信頼できるパンチ入力ができるベンダーなのかどうかを確認することが重要です。

健診代行サービスと健康管理システムのセット提供

続いて、健診代行サービスと健康管理システムをセットすることにより、健康管理システムへ健診データが取り込まれる形です。これは、健康管理システムと健診代行機関が連携しており、従業員に指定の健診実施機関で健康診断を受診してもらうことで、健診結果がシステムに反映されます。セットでお得なイメージもありますが、健診実施機関が指定されてしまう点が同時にデメリットともなります。今までお付き合いしていた既存の健診実施機関が指定対象外の場合はシステムへの反映がされませんので、指定先の健診実施機関の確認も必要となります。
とはいえ、労基署への報告義務が生じる、従業員が50名になったばかりの企業などには、選択肢のひとつとしておすすめです。

OCRサービス

次にOCR(光学的文字認識)機能を利用してデータ化するサービスがあります。これは、紙や画像の中にある文字を認識し、文字データに変換する技術です。最近では人工知能(AI)を取り入れたOCRもあり、認識精度が高まってきています。しかしながら、注意点としては、現在の技術では読み取り精度が必ずしも100%といえない点が挙げられます。現在、業界トップのAIを活用したOCRベンダーでも、健診結果を扱う場合は認識処理後に必ず目検(目視検査の俗称)を実施してくださいと言われます。そうすると結局はコストがデータ入力以上に掛かってしまうことになりかねません。
健診結果という、間違えることができないデータの特性上、精度面でのリスクを考慮して運用する必要がありますが、今後ペーパーレス化があらゆる場面で進みますので、期待のできる技術です。

データ化の方法・まとめ

① 健診実施機関にデータ提供できるかの確認必ず最初に確認しましょう
② パンチ入力代行入力精度と所要時間を確認しましょう
③ 健診代行と健康管理システムのセット従業員50名以上になったばかりの企業におすすめ
④ OCRサービス現在の技術では読み取り精度が100%ではない

健康診断結果のデータ統一方法

健康診断結果にまつわる大きな課題の2つ目、統一されていないデータの解決方法について解説します。

データ入力代行

パンチ入力代行に似ていますが、データ入力代行は、手書きや紙面などのアナログなデータを書いてあるそのままの通りではなく、「加工」してデータ化してくれるものです。よって課題として紹介した健康診断結果のバラバラな「項目名称」「単位」「表記」「項目順」を統一する作業もしてくれる分、パンチ入力よりも費用が高価になりますが、紙管理とデータ統一という2つの課題を同時に解決してくれます

健診データ統一ツール

株式会社エヌ・エイ・シーが提供するデータ統一ツール「Unifier(ユニファイア)」をご紹介します。健診実施機関からバラバラのフォーマットで送られてくる健診結果のデータを、統一フォーマットのデータに整えられるツールです。課題の部分で触れた「表記」「単位」に加え「データの並び順」が一度に統一されます。短時間で健診結果のデータを健康管理システムに取り込める形式にすることができますので、手間と時間を掛けずに事務作業時間を削減することが可能です。なお、株式会社エヌ・エイ・シーが提供する健康管理システム「Be Health(ビーヘルス)」には、このデータ統一ツール「Unifier」の機能も実装されております。
しかし、紙でしか健診結果情報が提供できない健診実施機関を利用している場合、まずデータ化するためのパンチ入力などが別途必要となってしまいます。よって、健診結果の大部分を健診実施機関からExcelなどのデータで受領できる企業や団体におすすめできるフォーマット統一の方法となります

健康管理システムによるデータ管理のすすめ

健康診断結果をめぐる課題と解決策を紹介してきました。健診結果のデータ管理ができるようになりましたら、健康管理システムの導入・活用もご検討ください。健康管理システムはさまざまな健康情報の一元管理をすることができるシステムです。それにより従業員の健康施策を推進する際の環境を整えることができるようになります。

健康管理システムの基本的な情報については下記の記事をご覧ください。

健康診断結果のデータ管理の重要性/データ活用の事例

グラフなどが書かれた紙の上に虫眼鏡が置いてあるイメージ

ここまで、健康診断結果にまつわる課題(データ化とデータ統一)と、その解決策について話をしてまいりました。それでは、健康診断結果の表記や単位などを統一し、データ化が完了したあとは、どのように活用すればよいでしょうか。健康管理システムを利用すると、できるようになることをご紹介いたします。

※健康管理システムを導入しない場合でも、健康情報活用のヒントとしてご覧ください。

さまざまな条件による対象者の抽出

健康情報を蓄積した健康管理システムでは、さまざまな条件により対象者を検索・抽出することが可能になります。たとえば、健診未受診者・有所見者・二次検査対象者・就業制限対象者などを簡単に検索することができるようになります。さらには、健康管理をメインとしたシステムなので、血圧が注意域で、かつ血糖値が正常値の人を調べたい、といった柔軟な抽出ができるシステムもあります。健診結果だけではなく、面談記録を含めて複合的な条件での対象者抽出が簡単にできるなど、抽出力の高いシステムを導入することで、対象者を明確にした健康増進アプローチをすることができるようになります。

組織の健康状況の把握

健康管理システムは一般的に健診結果だけではなく、ストレスチェックデータや問診の回答、残業時間、面談記録を管理することができます。まずはこれらのデータが整ったら、組織の健康状況の把握からはじめましょう。各組織の職種・勤務状況と照らし合わせて、傾向を確認することができるようになります。
たとえば、血圧が高い傾向にある部署、血糖値が高い傾向にある部署、メンタル面での面談が多い部署などが分かってくるかもしれません。また、複数の事業所がある場合、車での通勤が多い事業所はBMIが比較的高くなりがち、などの傾向が分かれば、健康増進施策を考える際のヒントにすることができます。このように健康管理システムで健診結果をはじめとしたさまざまな健康情報をデータで一元管理することで、一層効果的なアプローチができるようになります。

健康管理システムを活用する重要性

健康経営/人的資本経営

以上のように、健康管理システムを導入・活用することで、ターゲットを明確にしたアプローチで健康増進施策を立案できる「環境」を構築することができるようになります。健康情報を一元管理することで、より高度な分析をしましょう。
こうした環境があってこそ、健康経営や人的資本経営につながっていきます。各健康施策のPDCAをまわすためにも、データが扱いやすい形で一元管理される健康管理システムの活用が重要になります。

法令遵守・リスクマネジメント

また、健康管理システムには法令遵守やリスクマネジメントの要素もあります。年1回の定期健康診断が従業員一人ひとりにしっかり行われているか?就業上の措置が行われているか?健診結果の保存は適切か?といった法令遵守の観点で助けてくれるシステムです。また、万が一、労働災害が生じた際や、健康管理に関して従業員から訴訟を起こされた際など、企業が適切に健康管理を行っていたか、といった情報を確実に残しておけるシステムにもなります。

まとめ

以上のように、健康診断結果の課題、解決策、活用方法についてご紹介いたしました。現在、紙やバラバラのデータで健康診断結果を管理しておられましたら、健康に関する情報の宝庫でもある健診結果のデータ管理・活用をぜひご検討ください。 何から進めてよいか分からない、といった場合には、まずはお気軽に株式会社エヌ・エイ・シーまでご相談ください。

また、健康管理システムを比較・検討する際のポイントを解説した動画もあります。
特に導入の検討を開始した担当者様はぜひご覧ください。

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