花粉症をもつ社員にどう対応するか

プレゼンティーズムの代表的な原因の一つとしてあげられる花粉症について、その病態・治療、仕事への影響、職場でできる対策などについて解説します。

目次

プレゼンティーズムとは

プレゼンティーズムとは、出勤していても体調不良による労働意欲や集中力の欠如から、本来のパフォーマンスが発揮できない状態のことを指します
体調の悪さを押し切って出社したものの、体調不良で業務に集中できない状態が続けば労働生産性は低下し、結果的に企業の損失につながってしまいます。

花粉症について

花粉症は、花粉に対して人間の体が起こすアレルギー反応です
くしゃみ、鼻水、鼻づまりのほかに、目のかゆみ、涙目、さらには肌荒れなどさまざまな症状がみられます。
スギ花粉など、アレルギー反応の原因となる花粉が飛散している時期に起こり、それ以外の時期には症状が出ません。日本における花粉アレルギーの有病率を調べた全国調査によると、少なくとも日本人の4人に1人がスギ花粉症を抱えていることが指摘されています

花粉が目や鼻から入ってきて、体内の免疫システムによって異物とみなされると、異物に対抗するための抗体(IgE抗体)がつくられます。このIgE抗体は、花粉に接触するたびにつくられるため、少しずつ体内に蓄積されていきます。蓄積量があるレベルに達すると、次に花粉が入ってきたときに、アレルギー反応を起こすヒスタミンなどの化学物質が分泌され、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの花粉症の症状を起こします。

花粉症に悩まされる人が増えるのは春と秋です(図)。春の花粉症の原因としては、スギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカバなどの樹木の花粉があげられます。これら樹木の花粉は、風に乗って十数キロから場合によっては数百キロメートルも飛ぶのが特徴で、このため、スギやヒノキが少ない都市部でも大量の花粉が舞うことになります。

一方、秋の花粉症の原因としては、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラなど草の花粉があげられます。いずれも9月頃が飛散のピークです。カモガヤ、ネズミホソムギ、ススキなどイネ科の植物の花粉は、地域によってはほぼ1年中飛んでいるため、これらにアレルギーがある人は、何となくいつまでも花粉症の症状が続いているということがあるかもしれません。草の花粉が飛ぶ距離は数メートルと狭い範囲ですが、道端や公園、河川敷など身近な場所に生えているため注意が必要です。

花粉 飛散時期

図)花粉の飛散時期

出典:日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会. 鼻アレルギー診療ガイドライン2016

花粉症の対策としては、原因となる物質(スギ花粉症ならスギ花粉)を避けることが基本となります
具体的には、以下のことがあげられます。

  • 花粉飛散情報に注意する
  • 花粉の飛散量が多いときは外出を控える
  • 外出時はマスクやメガネ(できればゴーグル)で鼻や目を花粉からガードする
  • 花粉が付着しやすい素材の上着を避ける(ウール素材は避け、ツルツルした素材を)
  • 帰宅したら玄関で花粉をよくはらい、花粉を家に持ち込まない
  • 部屋の掃除をこまめに行う
  • 空気清浄機を稼働させる(花粉が飛散している時期は24時間稼働)

花粉症の治療については、症状を抑える対症療法と、完全に治すための根治療法があります
対症療法については、花粉症の症状は花粉が付着した身体の部位で起こるため、目の症状がつらい場合は点眼薬、鼻の症状がつらい場合は点鼻薬を使うのが基本となります。とくに症状の重い人は、内服薬(抗アレルギー薬)を服用しながら、点眼薬と点鼻薬も併せて使うことで症状を軽減できます。
根治療法(免疫療法)については、原因となっている抗原(アレルゲン)を少ない量から取り入れ、徐々に増やして、免疫を獲得しようという治療法です。治療には2~3年かかりますが、花粉症を完全に治すための唯一の治療と言われています。最近注目されている舌下免疫療法は、舌の裏側に薬を滴下し、そのまま2分間待ってから飲み込むというもので、痛みもなく、頻繁に通院する必要もありません(通院は1か月に1回ほど)。

花粉症が仕事に与える影響

花粉症の時期は症状がつらくて仕事がはかどらない、睡眠不足になる、集中力が低下するなど、仕事に支障をきたすことが少なくありません。くしゃみ・鼻水が止まらないなどの症状が出てくると、仕事の手を休めて鼻をかむという行為が1日に何度となく繰り返されます。また、症状や薬による副作用などで、仕事に集中できず、小さなミスを繰り返してしまう、判断力が鈍り落ち着いて考えられないため、仕事の効率が悪くなるといった問題に悩まされることになります。特に鼻づまりについては、入眠障害・中途覚醒などの睡眠障害のリスクを高めます。花粉症の症状が重くなるほど、仕事への支障度も大きくなります。

アレルギー性鼻炎を持つ人について、年間約3.57日の欠勤を生じること、出勤しても1日あたり2.3時間、年間48.93日も症状による集中困難などとなることから、合計して12.74日分の労働損失を生じるとの推計もあります。花粉症が原因となるプレゼンティーズムが、企業活動において大きな損失を招いているということが言えます。

職場における花粉症対策

近年、プレゼンティーズムによる労働損失を減らすという観点から、企業の健康経営の一環として花粉症対策を推進していくことの重要性が認識されるようになりました。健康経営度調査回答結果(大企業部門、令和5年度)でも、空気清浄機の設置など職場での花粉症対策を実施していると回答した企業は56.5%にのぼります

職場でできる取り組みとして、①在宅勤務の活用、②職場に花粉を持ち込まない対策、③職場から花粉を取り除く対策、④花粉症治療への補助、⑤花粉症対策に関するセミナー等教育の実施などがあげられます。ぜひできることから取り組んでみましょう。

経済産業省 健康・医療新産業協議会第10回健康投資WG 事務局説明資料①(今年度の進捗と今後の方向性について)https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/010_02_00.pdf

この記事を書いた人

今井 鉄平 氏
OHサポート株式会社 代表 産業医

2022年、日本産業衛生学会奨励賞受賞
【資格】

  • 産業医
  • 日本産業衛生学会専門医・指導医
  • 医学博士
  • 労働衛生コンサルタント
  • 社会医学系指導医
  • Master of Public Health (MPH)
  • 経営管理修士(MBA)


【所属学会】

  • 日本産業衛生学会(前産業衛生学雑誌編集委員)
  • 日本疫学会
  • International Commission on Occupational Health
  • 日本内科学会 他
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