「良い睡眠」をとるために

心身の疲労を回復する効果があり、量的に不足したり、質的に悪化すると生活習慣病のリスクを高めてしまう「睡眠」。今回は良い睡眠をとるためにすべきことや職場でできることについて解説します。

睡眠
目次

睡眠と心身の健康

睡眠には心身の疲労を回復する効果があり、睡眠が量的に不足したり、質的に悪化すると生活習慣病のリスクを高めてしまうことがわかっております。また、睡眠に関する問題は、メンタルヘルス不調とも密接な関係にあり、問題が続くことでストレスを感じやすくなり、うつ病などのこころの病を起こしやすくします。

睡眠不足は作業能率を低下させ、生産性の低下を招くことにもつながります。人が十分に覚醒して作業を行うことができるのは起床後12~13時間が限度とされており、起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下することが示唆されています。また、睡眠不足が連日続くと、作業能率は日が経つにつれて低下していくことがわかっています。ちなみに、客観的な検査では作業能率が低下しているにも関わらず、自分ではそれほど強い眠気を感じていない場合が多いようです。つまり、睡眠を削って遅くまで働き続けることで、自分では気づかないうちに作業能率・生産性を低下させてしまっている可能性が高いといえます。

睡眠不足は事故やヒューマンエラーのリスクを高める可能性もあります。スリーマイル島原子力発電所事故(1979年)やスペースシャトルチャレンジャー号事故(1986年)などにおいて、睡眠不足による眠気がその原因となった可能性が指摘されております。また、米国における研究では、睡眠時間が6時間未満の者では、7時間の者と比べて、居眠り運転の頻度が高いことが示されております。

良い睡眠をとるために

良い睡眠をとるためには、量・リズム・質の3点が重要となります。まず、睡眠の量についてですが、経済協力開発機構(OECD)が2021年に発表したデータでは、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で加盟30カ国の最下位となっており、日本人は全体的に睡眠不足であることが示唆されます。働く世代の睡眠時間はこの数字よりもはるかに低いことが予想されますが、多忙な毎日の中で少なくとも6時間以上の睡眠をとることが推奨されています。6時間以上の睡眠で、日中の眠気と疲労感が改善し、ストレスを感じにくくなることが期待できます。繁忙期やトラブル対応などで睡眠時間の確保が難しいときは、週の真ん中や週末だけでも十分な睡眠時間を確保し、睡眠不足が蓄積しないようにすることが大事です。また、昼休みに15分程度の短時間の仮眠を取ると、午後の眠気が改善されます。

 睡眠のリズム・質については、過去の配信記事「眠れない原因と対処法(睡眠に関する豆知識)」https://www.behealth.jp/column-suimin-mametishiki/ で詳しく述べられてますのでご参照ください。

「良い睡眠」のために職場でできること

良い睡眠をとるためには従業員個々人の取組みが重要であることは言うまでもありませんが、職場での取り組みが重要な場面もあります。

 長時間残業が連続して、睡眠時間の確保が難しい従業員もいることでしょう。前述のように睡眠不足が蓄積することで、作業効率・生産性の低下を招き、さらなる長時間労働を強いられるという悪循環に陥っていることもあるかもしれません。少なくとも6時間以上の睡眠時間が確保できるよう、日頃から適切な労働時間管理を職場で行っていくことも重要といえます。

 一方、睡眠時間は確保できるのについつい夜更かしをしてしまう、生活習慣の問題で睡眠のリズムや質を悪くしてしまっている従業員もいることでしょう。特に新入社員など、社会人としての基本的な生活習慣が身についていないケースもあるかもしれません。従業員向けに、産業医・保健師等の外部資源を活用して、睡眠衛生教育を実施することも大事でしょう。その際、健康づくりのための睡眠指針2014(厚生労働省)にある睡眠12箇条(※)を参考に伝えていくと効果的です。

【睡眠12箇条(健康づくりのための睡眠指針2014)】
 1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
 2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
 3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
 4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
 5.年齢や季節に応じて、昼間の眠気で困らない程度の睡眠を。
 6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
 7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
 8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
 9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
 10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
 11.いつもと違う睡眠には、要注意。
 12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

引用)厚生労働省.「健康づくりのための睡眠指針2014」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf

この記事を書いた人

今井 鉄平 氏
OHサポート株式会社 代表 産業医

2022年、日本産業衛生学会奨励賞受賞
【資格】

  • 産業医
  • 日本産業衛生学会専門医・指導医
  • 医学博士
  • 労働衛生コンサルタント
  • 社会医学系指導医
  • Master of Public Health (MPH)
  • 経営管理修士(MBA)


【所属学会】

  • 日本産業衛生学会(前産業衛生学雑誌編集委員)
  • 日本疫学会
  • International Commission on Occupational Health
  • 日本内科学会
  • 日本プライマリ・ケア連合学会 他
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