適量の飲酒は体にいい?

 昔から「適量の飲酒は体にいい」「酒は百薬の長」ということが言われてきましたが、最近ではそれを否定する研究が増えてきています。今一度、お酒との付き合い方を見直していきましょう。

目次

「Jカーブ効果」について

 多くの人を長期間観察し、まったくお酒を飲まない人や多量に飲む人と比べて、少量の飲酒をする人の方が死亡率は低いという研究結果が1996年に示され、グラフの形状から「Jカーブ効果」と呼ばれてきました。
 この結果は「適量の飲酒は体にいい」という考え方の根拠になってきましたが、多くの人を長期間観察する研究はさまざまなバイアスが入りやすいことが知られています。
 たとえば、過去に飲酒をしていたけど、体を悪くして禁酒した人を研究に組み入れると、見かけ上、お酒を飲まない人の死亡率が高まります。近年の研究において、このようなバイアスの影響を丁寧に補正して取り除くと、Jカーブ効果は小さくなり、消えてしまうことが確認されるようになってきました。

図)「全く飲まない」人を1とした場合の飲酒量ごとの相対的な死亡率

出典:アルコール健康医学協会. 適性飲酒の10か条
https://www.arukenkyo.or.jp/health/proper/pro10/pro01.html

健康リスクが少ない飲み方とは

 前述のように、最近の研究結果からは、循環器の病気を除き多くの疾患でJカーブ効果が認められないことがわかってきました。
 「健康損失を最小限に抑えるアルコール摂取量はゼロである」という考え方が常識になりつつあります。
 例えば、日本脳卒中学会の「脳卒中予防十か条」の中で「アルコール 控え目は薬 すぎれば毒」という一文がありましたが、2025年に「飲むならば なるべく少なく アルコール」に変更されました。

健康に配慮した飲酒に関するガイドライン

 「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(厚生労働省)」において、アルコールのリスクを理解した上で、表に示す純アルコール量(純アルコール20g=日本酒1合)に着目しながら、自分に合った飲酒量を決めて、健康に配慮した飲酒をこころがけることが大切とされています。
 
図)疾病別の発症リスクと飲酒量

出典:厚生労働省. 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン

 お酒の「適量」という考え方が、以前と比べてだんだんと厳しいものになってきております。
 「なるべく飲まない」「飲むならばなるべく少なく」を念頭に置きながら、お酒との付き合い方を今一度、見直していきましょう。

この記事を書いた人

今井 鉄平 氏
OHサポート株式会社 代表 産業医

2022年、日本産業衛生学会奨励賞受賞
【資格】

  • 産業医
  • 日本産業衛生学会専門医・指導医
  • 医学博士
  • 労働衛生コンサルタント
  • 社会医学系指導医
  • Master of Public Health (MPH)
  • 経営管理修士(MBA)


【所属学会】

  • 日本産業衛生学会(前産業衛生学雑誌編集委員)
  • 日本疫学会
  • International Commission on Occupational Health
  • 日本内科学会 他

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